marketing blog

SAKUSEN TOKYO/堀昌之のマーケティング所感と考察。その他ビジネスもろもろ。

「守りの広報」こそ、広報の実力が試される。

今ほど広報の「危機管理能力」が求められる時代はなかったのではないだろうか?

最近、僕の耳にも企業の不祥事の話はよく入ってくる。
そんな話を聞くたびに、企業の広報チームをマネジメントした事がある僕としては
「きちんと広報が機能しているかかな。。」と不要な心配をしてしまうことも多い。

広報領域に疎い(もしくはコミュニケーション領域に疎い)経営陣が、
狭い会議室で「あーでもない、こーでもない」と議論をした結果、
間違った判断をし、最終的に炎が燃え盛るような炎上に至ってしまうケースは非常に多い。
(ただの炎上ですめばいいのですが、株価の暴落や、損害賠償金の支払いなどの
 ケースに発展することも多いと思います。)

時に、社内に箝口令などを敷き、不祥事を隠蔽しようと経営陣が判断する場合もある。
その判断に対して、広報チームがきちんとモノを申せる環境がなければ、そもそも、
広報の存在意義などない。経営陣はI、何か不祥事が発生した場合は、
きちんと「社内」の広報のプロフェッショナルも交えて、対策をディスカッションすることが
必要だし、そもそも社内に「箝口令」などを敷く時点で、
まったくリスクマネジメントができていないという証左でもある。

企業には「攻めの広報」と「守りの広報」が必要だ。
攻めの広報は、「企業イメージを高めるための広報活動」であり、例えば、
社長をメディアに露出させ社長の好感度を上げたり。
商品をうまくニュースやワイドショーに取り上げてもらったり、
現在のお客様を集めてファン感謝イベントを開いたり、
CSR活動などを展開するような、企業イメージを高めるために広報活動をしていくことを指す。
これに対し「守りの広報」とは、前段までで書いたような
大きな不祥事や事故が起きた場合の、企業イメージの損害を最小限に抑えるための広報である。

現在は、キラキラ広報や広報3.0など、攻めの部分の広報が注目されることが多いのだけれど、
僕個人的には「守りの広報」ほど、広報のチカラが試されるし、そこに注目してしまう。
攻めと守りの関係で言えば、広報の場合、圧倒的に「守り」が機能しない時の方が企業へのインパクトは大きい。
攻めの広報が成功し、コツコツ100点を積み重ねても、守りの広報が失敗したせいで
その貯金が0、いや、−1000点になってしまうこともザラにある。
もちろん、広報がいくら頑張っても、ブランドイメージの低下を間逃れない場合もある。
しかし、その低下の度合いを緩やかにすることは、広報の職務であり、義務である。

特に個人的なイメージで申し訳ないが、ベンチャー企業と言われている会社ほど、苦手。
その大きな理由は、
・経営陣にマーケティング・コミュニケーション畑出身の経営者がいない。
・そもそも企業広報にチカラを入れておらず、広報としての経験が少ない。
・危機管理広報の外部パートナーなどと契約をしていないケースが多い。
・仲間意識が高く、社員を信頼する傾向があり、社内での情報管理が甘い。

などが挙げられる。

特に、問題なのは、「社員を信頼してしまう意識」と「経営陣の広報での経験不足」が
合わさって、問題化してしまうことだと思う。

例えば、危機管理広報が機能しないケースとして、情報の社内への周知と社外への周知のタイミングを
間違えてしまう。というものがある。
こういうパターンだ。
順序①経営会議で不祥事の詳細を掴み、詳細を経営陣だけで把握する。
順序②経営陣から、不祥事の全容ではなく概要と要点だけを「社員に共有する」
順序③その後日にメディアに、②の概要と要点だけをリリースする。

このパターンが一番最悪で、最終的に炎上したり、取引先からの執拗な追求を受けることが多い。
何が問題かというと「情報は高いところから低いところに流れる」ということを理解していない、
かつ「社員を信用してしまっている」ということだ。

②での社員の共有をリリースの前にやってしまうと、必ず、外にしゃべる人が出てくる。
もしくは、経営陣へ執拗に情報を取りに行ったり、例えば横領などの不祥事の場合、
その相手企業へ執拗に取材をする「正義感」にあふれる社員も出てくる可能性がある。
(ただの可能性じゃん!というなかれ。危機管理広報はリスクの可能性を0に近づけることこと仕事だ)
また、②を先にやると、憶測が憶測を呼び、事実に背ヒレ尾ヒレがついてうわさ話が回ることもある。

そして、そのうわさ話や、事実が、ネット上でのインフルエンサーの耳に入る。
不祥事の事実そのものもそうだが、不祥事をまだメディアにリリースしていない時点で、耳に入ると、
もう、その時点で、大きく燃える「炎上」パターンの出来上がりだ。
インフルエンサーが、ネットやリアルの口コミ限らず、その不祥事を多くの人に話していく。
特にブログやSNSなどのCGMで「炎上力のある情報」は、拡散しやすい時代だ。
オーディエンスが何十万もいるスーパーなインフルエンサーが不祥事の記事を書いた瞬間に、
SNS上にものすごいスピードで情報は広まっていく。

メディアのリリースの前に、世の中の人々や取引先がその不祥事を知ってしまったら、どうなるだろうか。
「不祥事隠し」として、その会社を糾弾したり、取引を停止したりする可能性もある。
「不祥事隠し」は日本のメディアの好物でもあるので、大炎上への準備は整ってしまうことになる。

ベンチャーでも、上場している企業は多い。不祥事隠しがバレた時点で、株価への影響も大きいだろう。

不祥事が社内で起きた場合の対処ステップは、
間違いなく②の社内への情報共有と、③のメディアへのリリースを同時に行うことだ。
もしくは③を先に行い、②をその後に行う順序でもいい。
また出来る限り、経営陣は情報をオープンにし、
不祥事の詳細と今後の対応をメディアにリリースするべきだ。

つまり、例えば「横領」などの問題の場合、「誰が、いつ、いくら横領し、会社としては
刑事告発を考慮に入れ、厳格に対応していく」という詳細をきちんと話すことだ。

それによって、広報へのメディアへの問い合わせは爆発的に多くなるし、
経営者がメディアにインタビューを受けたり、記者会見を開くことも多くなり、
広報的には殺人的なスケジュールと精神的な疲労がまっているだろう。

ただし、「不祥事隠し」として会社に烙印を押されることと、どちらがマシであろうか?
広報のプロフェッショナルなら、答えは、自ずと出ているのではないだろうか?

この時代、経営陣がいくら箝口令を徹底しようが、情報は漏れていく。しかも、尾ヒレ背ヒレがつきながら。
僕みたいな零細企業の経営者にすら、いろいろな企業の「不祥事の噂」が「詳細な情報」として届くこともあるのだ。
そして、残念なことに、その会社の経営陣の判断は「箝口令」を徹底していることが多い。

先にも述べたが、不祥事が起きた時、経営陣は社内の広報のエクスパート、
もしくは、社外の危機管理のプロフェッショナルときちんと対応策を検討したほうがいい。
コミュニケーションに明るくない経営陣の場合は、尚更だ。誰と相談するかということを
「間違えた時点」で炎上は確定するようなものだ。

危機管理広報でこそ、経営陣と広報チームの実力は試される。
<近いうち、企業広報チームの組織のあり方でもエントリーしようと思います>

Share on Facebook